卒業研究

卒業研究 2021年度

建築学科 卒業研究作品 一覧

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卒業制作 01
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⼋幡さんど -繋ぐ、繋がる、、参道をにぎわい拠点に

今井英⾥奈/東京

東京近郊の市街地は、 活性化に向けた策として再開発が行われている。 高層マンションには一時的に人が入るが、 コミュニティを創出する場がなく人との繋がりが希薄になっているがゆえに住み続けたいと思う街づくりができていない現状である。
千葉県市川市本八幡駅北口も再開発が連続的に進行しているが、 人間関係は希薄で家族が増えたら他市に転出するケースが多い。 駅周辺の公共施設も更新されているが人との繋がりがなく、 施設に人が集まらない。 本八幡地区は、 平安時代に創建された葛飾八幡宮を中心に街づくりが行われ、 再開発前は寺社やその祭礼運営にあたる商店街がコミュニティの中心となり人間関係が構築されていた。
そこで、 かつては街の中心であった寺社にコミュニティ形成の場としての価値を見直し、 八幡宮参道を拠点に人間関係を構築できる街づくりに繋ぐにぎわいの場を創出する複合施設を設計する。

COMMENT.
八幡さんの参道を活用して繋がる装置に仕立てている。プレゼンテーションはとてもきれいでよくできている。八幡さんに行くことを生活の中に落とし込むことは結構大変、もう少し高齢者が日常的に利用する場所を考えてはどうだろうか?(谷村留都)
鉄道で分断している参道を立体通路で復活させ、回遊性のある施設の提案であるところが面白く、うまく計画されています。また、熟考の上、膨大な作り込み作業が提案に感じ取ることができます。八幡さんどと八幡宮は一体的な施設であるので、配置図に八幡宮のを描くことで八幡さんどの存在性が示すことができると思います。参道を視点に、八幡宮を焦点としたパースや模型写真を見たかったです。(岩崎哲也)
とにかく模型の完成度に感服しました。これに掛けた労⼒だけでもこの作品への情熱が伝わってきます。それだけでなく、敷地の読み取りにおいては空間的にも時間的にも俯瞰して分析できています。計画としても⾮常によく考えられており、特異な形態をバランスよくまとめるデザイン⼒も秀逸だと感じました。また、模型表現だけでなく、プレゼンシートのまとめ⽅も⾮常にわかりやすく、センスを感じます。何より、「⼋幡さんど」のロゴデザインが気に⼊りました。全体的にバランスよく⾮常にすぐれた作品であると評価し、2票を⼊れました。(奥井康史)




卒業制作 02
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崩壊侵緑 -観測の旅路

志⼾岡⿓太郎/福岡

地表に人類が存在しない地球で残された建築はどういった形で消滅していくのか、自立機械人形通称ボットプルたちは、どういう風に活動していくのか。機械人形たちの建築はどういった形になるのか。そこに何が必要で何が不要なのか。
そういった疑問を自分の感性で予測、探究する設計です。ボットプル達の存在意義は、崩壊した自然環境の改善、それは人間が再び地上での活動ができる為、もう一つは人間の代わりに地球を観測し記録することである。
一階平面図はコンピュータにアクセス可能なコンソールのみが複数台設置されており、地下平面図には、記録された情報を保存、更新するコンピュータが配置されており、ナノマシンでの瞬間治癒が可能な治癒パネルと、ごく少数の人類を保存したコールドスリープ室、空調を調整するクーラーなどが配置されている。

COMMENT.
タイトルに興味を持ったが正直ギャップがあった。人間がいなくなったけれど、無機的な建築は残っていて廃墟になった空間を利用するのは一体何者なんだろう?生物の可能性はないのだろうか?(谷村留都)
空想の世界における建築を考えることに面白さを感じます。ボットプルなる生命体?を動かすエネルギはどうするのだろう。ナノマシンやコンピュタのバックアップはどうするのであろう。遠い未来まで維持する建築物は提案されたものだろうか。(岩崎哲也)
そもそもわれわれ⼈間にとって建築とは様々なものから守るシェルターとしての役割があります。ではロボットにとってそもそも建築は必要なのだろうか?必要だとしたらどんな役割を求められるのか?・・・いろいろなことを考えながら、⾮常に興味深く⾯⽩い読み物として読ませてもらいました。キャラクター設定や漫画表現なども秀逸で、プレゼン⼒も⾼く評価します。もっと新たな建築計画、建築デザインの提案につながる設定があると、建築卒業研究として⾼く評価できたのではないかと思います。(奥井康史)



卒業制作 03
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市⺠農園の在り⽅

近藤歩/名古屋

近年、 都市部の農地では宅地等への転用需要が大きく農地面積は一貫して減少している。こうした現状から、都市部では土に触れて野菜や草花を育ててみたいという都市住民の需要の高まりを受け、都市的地域を中心に、地元の住民が利用できる市民農園の数は年々増加している。しかし、この市民農園には指導員やアドバイザーはいなく、 講習会やイベントがない。また、友逹や利用者同士のコミュニケーションが作りにくく、交流の場がないといった問題がある。
そこで、本計画では、 都市的地域における市民農園のあり方を見直し、農園としての機能だけでなく、農を通して利用者や地域住民の地域の交流拠点となるコミュニティ農園を計画する。
COMMENT.
農業、野菜作りをキーワードにコミュニティを再構築する提案で、場所選びも適切で、今後の現実的な課題になると思われる。ただ、1 階の個々のスペースはそれぞれの連続性、繋がり方に説得力が少なく、唐突である。また、三角形など変形な形の中にただ押し込んでいるようでこの辺りの詰めは甘い。(谷村留都)
住宅密集地において、野菜栽培をしてみたい人に農園を提供する提案であるが、屋根に農園を載せることにより、よい栽培環境が保たれるのだろうか心配です。当該地で収穫できた野菜を直売することはあるが、農園とコミュティゾーンとの繋がり、相乗効果といったものが感じられません。都市に少ない緑地(農園)を創出するのであれば、緑化、環境配慮といった視点をもった提案もありと思います。(岩崎哲也)
三⾓形、台形からなる形態を⾮常にバランスよく組み合わせたデザインセンスは秀逸だと感じました。また、それぞれの空間の使われ⽅をイメージし、空間のつながりや動線などを考えながら⾮常に丁寧に創造していることが、模型やCGからうかがえます。全体的に完成度の⾼い作品であると⾼く評価します。なお、模型を⾒ると名鉄瀬⼾線からの⾒られ⽅や瀬⼾線の⾒え⽅なども良く考えられているように思われましたが、プレゼンシートではそのことの説明がなく、どこまで意識して計画したのか質問してみたかったです。(奥井康史)



卒業制作 04
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社会的弱者配慮における都市の発展について -問題の⾒える化

野村⿓⼆/名古屋

浜松市中心街の一角が放置されて長い年月が過ぎた。
迫りくる少子高齢化と人口減少の波は、中心街の活性化を減退させ、衰退の一途を辿る。
浜松市では、それぞれの地区で大型の商業施設が誕生した結果、都市のドーナツ化現象が顕著となった。また昨今、新型コロナウィルスの蔓延と抑制された経済活動により拍車がかかった。
また、社会的ストレスが増加した中で人々は癒しを求めてペットを飼う人が急増した。
しかしそれは、年々減少してきたペットの処分問題に改めて警鐘が鳴らされている。
こうした社会的問題の中で、ドーナツ化した都市部の在り方や、あるべき方向性とは何か?
環境配慮・サスティナブル社会の中であるべき姿とは何か?…今ある姿は本当に問題なのか?
4年間で学習した知識や経験を持って提示してみたいと思った。
COMMENT.
現代の社会問題に取り組んでいるが、それぞれに融合性があるとは感じられない提案になっていて少し残念である(谷村留都)
社会的弱者として高齢者向け住宅と若年層向け住宅を抱き合わせ、ふれあい広場、託児所、動物愛護施設のコンプレックスの提案であるが、弱者だけが集住してもお互いの弱みを相手方の強みでカバーできるようで良いです。高齢者住宅、若年層(子育て世帯?)住宅それぞれの建築的な配慮などが表されていると提案に深みが出てくると思います。建物形状は3つ施設を現し、まとまっていてよいです。ただ、道路を管理する立場からすると、道路沿いのハモニカ駐車場はやめて頂きたい。(岩崎哲也)
現代⽇本における社会的問題を複合化することで解決しようとする試みで好感が持てます。ダイアグラムをそのまま建物形態にすることはわかりやすいのですが、もう少し⼯夫があるとより良い案になったと思います。例えば、「spiral up」とあるように、3つの円をつなぐ輪の部分がらせん状になり上下階の動線的つながりを創り出す⽅法もあったかもしれません。また、通気や採光など環境について積極的に提案しているところも好感が持てました。シロッコファン型通気はもっと深掘りすると説得⼒が増す⾯⽩いアイデアだと思います。なお、模型の周辺建物に発泡スチロールの梱包材を利⽤したエコの意識にも共感しました。(奥井康史)



卒業制作 05
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⽔のたまり場

⻑⾕川将也/ 名古屋

現在では、様々な文化が生まれたり、また海外から入ってきた文化などたくさんある。そんな中、昔の文化などの関心がうすれてきている。
そのため地域の人やこの地域に足を運んだ人が、様々な文化や歴史に触れ、この場所に来たいろんな世代の人達との交流を促し、地域の活性化につなげる。
この建築空間を目指して、地域との調和を図り浸食し、この施設に運搬し、堆積させる。そしてさらに地域に浸食し調和を図り、この地域の循環をなし、地域の活性化を促す。
COMMENT.
都市景観としてのアイデイアはよいが個々の機能の詰めが甘く、建築の形と内容がしっくりいかず、盛り込みすぎ、もう少し要素を絞って内容を詰めてみてはどうでしょうか?(谷村留都)
築城のためにつくられた堀川、30年ほど前に世界デザイン博覧会のメーン会場となった国際会議場と白鳥公園、歴史やレガシィのある地域に提案されており、興味深いものです。もうひとつ人を呼び込むものが提案されるとよいのだが、なかなか名案はないものです。平坦な白鳥の地に立体公園の形状はのびやかでよいと思います。堀川の水上交通もアクセスのひとつとなりうるのではと考えますがいかがでしょうか。(岩崎哲也)
難しい形態を⾮常に美しくまとめているデザインセンスは秀逸だと思います。模型も⾮常にきれいで、伸びやかな空間を表現できていました。模型や図⾯では⼿すりを表現せずコンセプチュアルに表現していますが、今後はそれらも含めデザインすることに踏み込んでもらえればと思います。作品シート冒頭の古語調の語り⼝とこの形態とのギャップも⾯⽩いと思いました。建築計画としては、川の⽔位の変化による⽔のたまりの時間による変化をもっと積極的に計画し、表現するとより魅⼒的になったのではないかと思います。(奥井康史)



卒業制作 06
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来てみいや、⾷⽂化ひろめ市場 -みんなでおきゃくしよう

⼩原京/ 名古屋


COMMENT.
高知のひろめ市場は観光客などでもよくにぎわっているが、更に進化させる提案である。観光客より地元の人の利用を期待しているが、提案それぞれに関連がなく唐突感があって、どう行動を予測しているか読めない。(谷村留都)
ひろめ市場はフードコートであり、各店舗で様々な地のものを対面で販売しており、観光スポットとなる集客施設です。高知で一泊したときに、夜には安くてうまいもの、旨い酒を頂き、翌朝にはお土産を手にしたひろめ市場をリプレースする提案です。市場の時よりも、来客者の滞在時間を長くすることは評価しますが、話題性、訪れたくなる点でソフト的対応が必要に感じます。菜園の立体化は話題性があるかもしれませんし、ビル最上階に展望を配した建築物の形態は面白いですが、追手筋のよさこいが見えるのでしょうか。(岩崎哲也)
本⾒ていて楽しくなる作品です。こちのまちを「こうしたい」という想いに満ち溢れています。建築設計とはいろいろな⼈たちの想いをカタチにすることだと思います。そしてその想いが⼤きいほど、それをカタチにした時に良い建築ができると思います。もちろん、いろいろな⼈たちの中には設計者⾃⾝も含まれます。設計者の想いが⼤きいことは良い建築づくりに⽋かせないことだと思いますので、これからも⼤事にしてもらいたいと思います。想いを実現するためには、丁寧な分析やデザイン⼒、技術⼒なども必要になりますので、それらについてもより向き合って取り組んでいただければと思います。(奥井康史)



卒業制作 07
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place inspire your living -ライフスタイルをインスパイアする場所

渡邊遥奈/名古屋

「せともの」と、ここだけのライフスタイル
瀬戸市は、戦前の街並みが多く残っているが、その一方で若い世代の住める賃貸住宅のような場所は少ない。そこで、若い世代の人たちにも興味を持ってもらえるよう、瀬戸の魅力を見て知ってもらう場所として集合住宅を選んだ。
最終目的は、瀬戸の賑わいを取り戻すこと。
その実現に向けて、下の5 つの場所としての機能を持たせた。
COMMENT.
衰退しつつある瀬戸のまちに、生活の場と企業を融合させる提案。建物の形は現実的ですぐにでも実行できそうにみえるが、内部に個性的なコアを作ったり、可変性を提案したりするアイデイアは将来を含めた生活の変化も取り込んでいる。個々の装置もよく考えられている。表現もきちんとよくできていて、わかりやすい。(谷村留都)
瀬戸物の伝統を存続・発展させようと市民ぐるみの取り組みの提案が素晴らしいと思います。そのため、陶芸家なり、伝統を受け継ぐ者を集め、瀬戸に住まわそうとするものです。集合住宅は内部通路を介して住戸とつながり、各住戸はコアの配置により自在なプランとすることで、居住者に独自性が図られると思います。市民ぐるみの取り組みであり、市民にもこのプログラムの成果を示せるように、もう少し開けた施設であっても良いように思います。(岩崎哲也)
今まで多くの学⽣の作品を⽬にしてきましたが、マテリアルまでイメージした計画は⾒たことがありません。また、瀬⼾と瀬⼾物の復権のためのソフトの提案から構造や家具も含めた各住⼾の計画までよく検討されており、それらを⼀貫したテーマとコンセプトでまとめ上げた全体的に完成度の⾼い作品です。作品シートの表現も⾮常にわかりやすく、細部にわたる建築計画の考えは余すことなく表現できていると思います。⼀⽅でここを利⽤する⼈たちの活気や楽しさがパースや模型ではあまり表現されておらず、その部分をもっと表現するとより魅⼒的な案になったと思います。(奥井康史)



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サンぷら坂のライブラリー -予期せぬ出会いがある駅前の図書館

⻲岡郁美/東京

中野といえば、都心にもかかわらず個人経営のお店が多く、どこか懐かしさが残るような界隈生に富んだ街、というイメ ー ジが定着している。
ところが中野区は今「l00年に1度」と言われる大規模な街の再編が予定されており、 駅周辺には超高層ビル、タワ ー マンションが立ち並ぶ予定だ。
私にとって、 中野の好きなところは思わぬ出会いがあることである。
ふらっと立ち寄ってみた小さなお店が、 美味しかったり、 美味しくないけど居心地が良かったり。
街が画ー化し、 効率化されていく中で、 何か人や物事との偶然の出会いを生むような仕掛けが作れないだろうか?

COMMENT.
手書き風のパースやコンセプト説明図はわかりやすく、いい感じに出来ている。本を読むという行為を建築的に展開するのは面白いが、人と人との関係性に仕立てるのは難しい高層化した、非人間的な街の中にこういうヒューマンスケールのほっとする空間があると町が楽しくなる。(谷村留都)
開架図書を分節し配置し、貸し出しに特化した図書館の提案であるように思います。駅前に立地し、後背地には多くの人が住んでおり、そうした人が通りすがりに本を発見することができる。分節されたイエごとに図書の分類分野ごととか書評家によるセレクトされた本が並ぶと面白いと思います。また、セレクトされた本を紹介する情報発信する場となっても良いのではないかと思います。本屋さんが減り、本を手にする機会がなくなるなか、こうした図書館は必要ですね。(岩崎哲也)
「イエ」の隙間の起伏のある路地の模型写真からわかるように、空間を丁寧に設計し、とても気持ちの良い環境を創り上げています。そして、その環境で過ごす⼈たちのイキイキとした物語が聞こえてくるようです。建物を「物件」と呼ばれることがありますが、設計とは「物件」ではなく「物語」をつくることだと思います。それがとてもよくできています。ただ、あえてここにこの建築を提案したのでしょうが、優しい良い建築であるがゆえに周囲に負けてしまい、かわいそうにさえ思えてしまいました。もっと気持ちの良い環境に建っていたらこの建築の気持ち良さがより引き⽴ったのではないかと思います。(奥井康史)

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