昨今社会で「空き家問題」は深刻化している。周りを見渡せば必ず空き家や空室、空き地など様々な「空き」が存在してしまっている。地方の人口減少や、高齢化社会問題、空き家の管理や活用の問題など様々だが、その「空き」たちはいずれコインパーキングなどになってしまうのが現状である。しかしそのようなままで果たして良いのだろうか。空き家となる主な原因は「使わなくなる」ということである。かつてはそこに住んでいたものの、生活リズムが変わり、生活スタイルが変わるとその場所は窮屈、あるいは持て余すことになる。そしてそこを去り空き家となる。このサイクル繰り返しで今の住宅の空き家の問題は年々深刻になっている。
そこで、生活スタイルが変わってもいつまでも同じ場所に住めるような建築を構築していく必要がある。生活に合わせて簡単に増減を繰り返すことができ、自分のスタイルに合わせて循環し変わり続ける建築があれば人々はその場を去ることなく、住み続けることができるのでは無いだろうか。
主な計画は、住み手が空間の取捨選択を容易に繰り返すことのできる集合住宅の構築である。生活スタイルにあった空間の選択またはその大きさ、デザインの選択など住み手は今住みたい住宅の姿をカタログの中から選んでいく。そして生活していく中でさらに必要となった空間があればまた増やすことができるし、必要がなくなれば返却することができる。ずっと同じ場所に住みながらも、建築は循環し、人の生活に追従していくように変化していく。
この建築は場所を変えることなく変化していく。そこに住まう人の生活の変化に追従し、簡単に選択、返却を繰り返すことができる。都市の空洞化の根源であった空き家問題。いつまでも、時が経つほどに魅力的に生まれ変わっていくこの建築が、問題解決に向かう第一歩になるのでは無いだろうかと考える。
COMMENT.
紙面レイアウトや表現、色使いにセンスを感じます。模型も表現がしっかりできていると思います。これだけ多くの家族の物語をイメージしながら空間を創造する力と熱意にも共感しました。ひと家族の住⼾でもよいので拡大して更に細部まで検討できると案が深まったのではないかと思います。
なお、「住みたい住宅の姿をカタログから選ぶ」という表現に違和感を感じました。私自身は、その人に合った豊かな空間をつくることで設計の力を発揮したいと思っています。仮設住宅の提案であれば実現性も高いかもしれないと思いました。