商店街を一つの大きな「家」にみたてて商店街の住人と訪れる人々が衣・食・住の日常を共有することでコミュニティが生まれ、みんなで生きているという感覚が生まれることを期待する。これからの人口減少社会において支えあいながら、限りある資源を共有する生活が必要である。神宮の森のようなアーケードの下で商店街の住人と訪れる人々が交流して住みやすい小さな社会をつくる。
PROFILE.
造園の仕事をする中で、建物と庭との繋がりが希薄となっているのを肌で感じていました。庭を通して自然をもっと感じられる住まいを考えるとこができたら素敵だなと思い、自分で建築を学び自分の手で自然と人が溶け合う様な場所をつくりたいと思っています。
COMMENT.
愛知産業大学通信教育部は仕事や家事をしながら様々な立場、環境の中で学習している学生が多く、鈴木さんもそのお一人で造園外構のプロフェッショナルです。
熱田神宮は年間500万人以上の参拝客で賑わい伊勢神宮に亞ぐ由緒の尊い大社で知られていますが、その東側には名鉄線神宮前駅とJR熱田駅に挟まれた商店街がありますが、大変閑散とした状態となっておりこの地域に着眼し“中間領域”をキーワードとし卒業研究を進めています。
一般的に中間領域は屋内と屋外、それらの半屋外空間と捉えることと思いますが、鈴木さんの提案は、リビング、キッチン、食堂、風呂など住宅である本来屋内的要素である日常の生活の場を中間領域として解釈しています。この解釈が設計の幅を広げ新しさを感じます。また、工房、シェアハウス、図書室、ホールなどの多くの人が気軽に訪れる要素も挿入し、より商店街と住人通しとの交流が生まれるようにプログラムされています。
アーチ型フレームデザインは樹木を単純抽象化し対面の熱田神宮の緑と呼応し、ファサードは商店街を豊かに再生しています。屋根面からは木漏れ日のように光を商店街に取り入れることで本設計趣旨である日常の場がより穏やかな空間となっています。
建築デザインが周辺環境、人の流れや居心地、光や風、構造といった複数の事象を一度に解決していることを大変高く評価し、今後、造園だけでなく建築においても更なる活躍を期待しています。(担当教員:濱田修)