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マスクをめぐるあれこれ(国際コミュニケーション学科 寺澤陽美)

研究室からこんにちは(短期大学)
2020年は、新型コロナウイルス感染症(“COVID-19”または“Corona Virus”)が世界中に蔓延し、多くの人や社会の動きに影響と不安をもたらしました。
コロナに翻弄された一年だったと言っても過言ではないでしょう。
マスク、手洗い、うがいは、身近な感染防止策として誰にとっても必須のものとなりました。
今回は、現在の私たちにとって手放せないマスクについて、日本とアメリカを比べてみたいと思います。



英語で“mask”というと、一般には「覆面、仮面」を連想します。私たちが現在身に着けているマスクは“flu(e) mask”(流感・感冒用のマスク)や
“face mask”(顔用マスク)、あるいは“surgical mask”(外科用マスク)などとと呼ばれることが多いです。

コロナ以前から、日本では、寒い時期に風邪やインフルエンザを予防したり、春先に花粉症の症状を和らげたりするために、日常生活でマスクを着用することも珍しい光景ではありませんでした。
ところ変わってアメリカでは、コロナ以前には、マスクの使用は一般の人々の日常生活には根付いておらず、一般にマスクといえば介護や医療に用いる衛生用マスク、あるいは日曜大工や工事の際に用いる粉塵防止用マスク、という認識が一般的でした。
大都市のスーパーやドラッグストアでも、インフルエンザが流行する季節や花粉の飛び交う時期になっても、日本のように数十枚が箱詰めされたマスクが店頭で山積みされているのを見かけることはありませんでしたし、街中でマスクをして歩いている人は、ほとんどいませんでした。
マスクをしているのは質の悪い病気にかかっている人か不審者であり、「人前でマスクをすることを勧めない」と、アメリカに住む日本人はアドバイスを受けることもありました。不審者と判断されると、場合によっては命にかかわることもあるからです。
また、東日本大震災の直後にアメリカから日本にボランティアに来た私の友人は、来日前にカリフォルニアのホームセンターでマスクを探し、日曜大工の作業時に使う防塵用N95マスクを見つけ、日本に持参したと言います。

アメリカには、「覆面禁止法」(“Anti-Mask Law”)という法律が多くの州にあります。
覆面禁止法は、1845年にニューヨーク州でできたのをはじめ、その後、暴力的な白人至上主義カルトへの対策として、20世紀半ばに多くの州が「顔を隠すマスク」を禁止するという法律を導入しました。
このような歴史的経緯を経て、人前で顔を覆うことをしないという慣習が根付いているようです。
もっとも、このような覆面禁止法に類する法律は、アメリカだけではなく、ヨーロッパ各国、太平洋地域の国でも存在するようですし、宗教上の理由から顔の大部分を覆う人々もいます。

 



コロナが猛威を振るっている2020年、マスクは感染防止に有効との研究もあり、世界の多くの国で、人々がマスクを着用する姿が見られるようになりました。
一時深刻化したマスク不足を経て、現在のアメリカでは、ドラッグストアやスーパーなど身近な場所で手に入る機会が増えたそうです。
しかし、「顔を覆うマスク」というものに対する考え方は国や文化によって大きく異なっており、昨今のコロナ蔓延を通じて、マスク着用の習慣について、日本人には改めて考えさせられる機会と言えそうです。

※覆面禁止法、マスクについて、興味のある方は以下を参照ください。
Robert A. Kahn, Anti-Mask Laws, The First Amendment Encyclopedia, The Free Speech Center, Middle Tennessee State University
https://www.mtsu.edu/first-amendment/article/1169/anti-mask-laws(2020年12月20日閲覧)
World Health Organization, All about masks in the context of COVID-19,
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/when-and-how-to-use-masks(2020年12月20日閲覧)