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2024年12月号「研究室からこんにちは」アメリカンのないアメリカ(寺澤 陽美)

研究室からこんにちは(短期大学)
 冬本番の寒さとなり、ほっと一息つきたいときには、みなさんはコーヒー派、それとも紅茶派でしょうか。
 筆者は普段カフェや喫茶店ではアメリカンを注文しますが、今回のテーマは、アメリカではアメリカンではない、という少々ややこしい話です。

 

 アメリカンコーヒーというと、浅く焙煎したコーヒー豆で入れたコーヒーのことで、やや薄めのコーヒーとして日本では一般に知られています。
 ところが、コーヒー文化が根付くアメリカでは、American coffeeとは呼びません。意外ですが、American coffeeは、和製英語です。

 アメリカの街なかのデリやダイナー(ファミリーレストランのような食堂で、一般にコーヒーおかわり自由)で注文する際には、単にcoffeeあるいはregular coffeeという呼称が良く使われます。
 regular coffee(普通のコーヒー)というのも変な話ですが、そもそもアメリカの普通のコーヒーは薄めである場合が多く、かつては主流でした。まれに、(少々大げさですが)中身が透けそうなほど極薄コーヒーに出くわすこともあります。
 薄いコーヒーという意味でweak coffeeとも呼ばれます。反対に、濃いコーヒーはstrong coffeeといいます。
 また、エスプレッソをお湯で割って少し薄めたものをAmericanoと呼び、アメリカのカフェでも広く使われているようです。

 かつてのアメリカのコーヒーの代名詞であった薄いコーヒーだけでなく、イタリアのカフェやバールなどで提供されるエスプレッソをベースとしたコーヒーにアレンジを加えたものを提供する店が近年登場し、シアトル系コーヒーショップとして人気です。ご当地アメリカでもあちこちにあり、どこもにぎわっています。
 これらのコーヒーショップでは、庶民的なデリやダイナーに比べて値段もかなり高く、また、総じて濃いコーヒーが提供されます。
 美味しいことはもちろんですが、メニューも多様で、カプチーノやカフェラテ、夏にはフラペチーノ、また個人の好みに合わせた特別オーダーができるのも特徴の一つです。

 都会では毎朝、好みのコーヒーショップ、あるいは庶民的なデリで買ったコーヒーを片手に仕事に向かうビジネスパーソンの姿を多く見かけるのは、アメリカのコーヒー文化の一つです。



 今回は、アメリカのコーヒー文化の一端をアメリカンな視点から見てきました。
 文中で触れたダイナーについては、非常に興味深いアメリカ文化ですので、いつかまた次の機会にご紹介できたらと思います。


参考資料:
ブライアン・サイモン、宮田伊知郎[訳](2013)『お望みなのは、コーヒーですか? -スターバックスからアメリカを知る』岩波書店
旦部幸博(2017)『珈琲の歴史』講談社
全日本コーヒー協会『COFFEE BREAK』https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/basic/(2024年12月20日閲覧)