ブログ

ご存じですか?愛知の高校入試制度 (国際コミュニケーション学科 首藤 貴子)

研究室からこんにちは(短期大学)
 2023年春、愛知県の公立高校入試制度が一部変更します。2022年度現在、中学校3年生の子どもたちから対象となります。もともと複合選抜制度という特異な入試制度である上に、度重なる制度変更で、戸惑っている子どもたちや保護者が多いように思います。

●高校入試にまつわる誤解
 子どもや保護者が得る情報は、中学校で開催される進路説明会や学級担任の先生との個別懇談会、あるいは、進学塾から得ていることが多いようです。とくに愛知県の場合、入試のしくみが非常に複雑ですので、そうした機会のみでは断片的な知識しか得られないのが現実です。そのせいか、入試についての様々な“うわさ”を耳にします。たとえば、これ。

「生徒会/部活動/ボランティアをすると、入試で有利になる」

 よく聞く話ですが、愛知県の全日制公立高校の一般選抜においては、ほぼ当てはまりません。
 一般選抜では、受検者を得点化し、上位から合格者を決定していきます。その得点化の方法は、原則、①いわゆわる「内申点」(通知表で示される9教科の5段階評価×2=90点満点)、②いわゆる「当日点」(入試当日の学力検査5教科各22点=110点満点)、この①「内申点」と②「当日点」の合計点を出します。ただし、この合計点は、①「内申点」を重視するのか、②「当日点」を重視するのか、各高校が決定し、以下のⅠ~Ⅴ型いずれかの型に当てはめて計算されます。

Ⅰ型:「内申点」+「当日点」
Ⅱ型:「内申点」×1.5+「当日点」…「内申点」重視
Ⅲ型:「内申点」+「当日点」×1.5…「当日点」重視
Ⅳ型:「内申点」×2+「当日点」…「内申点」最重視
Ⅴ型:「内申点」+「当日点」×2…「当日点」最重視

 こうして算出された各受検者の①「内申点」と②「当日点」の合計点によって、合否が決まります。調査書の記載事項や面接結果等が影響するのは、この合計点で同位の受検者がいた場合に限られます。
 なお、愛知県の全日制公立高校の入試には、一般選抜のほかに、推薦選抜、特色選抜、全日制単位制選抜等があります。それぞれの選抜方法をよく理解した上で、最適な方法を選びたいものです。

●みんな、進学できます
 一方で、様々な理由で中学校に行けない/行かない子どもたちがいます。そのような子をもつ保護者の皆さんからよく投げられるのは、次のような質問です。

「中学校に行ってないから、進学は無理だよね?」

 答えは、NO。中学校に行けなかったとしても、進学は可能です。不登校であっても、専修学校高等課程には進学できますし、いわゆる「不登校枠」を設けている私立高校もあります。また、公立高校入試では、条件に該当すれば「長期欠席者等にかかる選抜方法」を実施しています。
 不登校の子どもだけではありません。勉強が苦手でも、家計が苦しくても、障害があっても、日本語に不安があっても、高校中退していても、進学への道は開かれています。一口に「高校」と言っても、全日制、定時制(昼間・夜間)、通信制と、さまざまな課程があります。また、広域通信制は、通信制とも異なるしくみで、その「サポート校」の位置づけもあまり知られていません。「家計が苦しくて進学できない」と思い込んでいる子どもたちや保護者の皆さんにとっては、各進路先に必要な費用やその軽減補助制度の情報が特に重要です。さらに、進学先は「高校」に限られません。学びの場や学ぶための方法はさまざま用意されているのです。

●15歳の進路決定に必要な情報収集を
 このような情報を届けるために、あいち県民教育研究所にて『知る・わかる・考える 愛知の高校入試―未来をつくる選択へ』を2022年8月に刊行しました。15歳の子どもたちの自己決定、それを支える保護者や教師に必要な情報を、長年進路指導を担ってきた中学校・高校教師が中心となって執筆しました。2023年公立高校入試の変更点についても解説しています。また、障害のある子どもたちの進路選択についても取り上げています。
 たとえ今、この先の人生が見えなくても、子どもたちの未来を支えるしくみは、結構あるものです。未来の情報を得ることが、今を大切に生きるための一助になることを願っています。


※書籍の詳細については、あいち県民教育研究所(http://aichi-minken.sakura.ne.jp/)にて。
※学校に行っていない/学校が苦手という子どもたち、その保護者の皆さんを対象に、中学校の先生が愛知県内の進路先情報や入試制度を解説する会があります。ご興味ある方はぜひ。私も会場でお待ちしています。詳細は、親の会パステル(https://ameblo.jp/pastel2018/)にて。