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研究室からこんにちは(建築学科 山口雅英)

研究室からこんにちは(建築学科)
 通信教育部建築学科の山口です。
 大学では造形基礎を担当していますが、長年携わってきたのは紙版画の研究です。木版画は誰もが知る版画技法の代表です。その次にメジャーな技法は銅版画でしょう。展覧会で見かける版画の大部分は木版画か銅版画です。それとは対照的に紙版画を知る人はほとんどいません。知っていたとして小学校低学年の図画工作、あるいは園児の造形あそびの教材という認識で、成人の版画作家の表現手法としてイメージする人はほとんどいないと言って良いでしょう。
 紙という素材は木材は金属に比べはるかに加工が容易な素材です。切る、破る、傷つける、凹ませる、折り曲げる、接着する、塗装する等、特に専門的な器具や技術がなくとも多様な加工をすることができます。多様に加工できるということは多様な技法が可能だということです。高価で、高度な技術と専門的な器具と長い制作時間が必要な技法ではともすると失敗しないように守りの姿勢になってしまう傾向にあります。これに対し紙は他の素材に比べはるかに安価で手間と時間がかからないため、失敗をおそれずどんどんと思いつきを形にし、新しいことに挑戦し、試行錯誤していくことができます。紙版画の手軽さは作者の気持ちをオープンにしてくれる、これはとても重要なポイントです。私は大学の同好会で紙版画を指導していますが、基本的な技法を押しれると学生がそれぞれいろんと試行錯誤をはじめます。私が特に指示しなくても自発的にそれぞれのスタイルを見つけ、練り上げています。基本は同じでも、全くそれぞれの全く異なる個性が出た作品に展開しているのです。こうした中で、徐々に国内外の公募展やコンクールでの入選、入賞を果たす学生も増えており世の中に紙版画の実力と魅力を伝えてくれています。
 こうした学生の活躍や私が紙版画技法を紹介するYouTubeによって少しずつですが紙版画も浸透してきたように思います。展覧会には紙版画を教えてほしいという木版画作家、銅版画作家の方もいらっしゃるようになりました。
 こうした紙版画の魅力と可能性に触れてもらえる展覧会と自負しております。みなさまのご高覧をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
(建築学科准教授 山口雅英)



会場:ギャラリーA・C・S
名古屋市中区栄1丁目13-4 みその大林ビル1F
https://galleryacs.amebaownd.com/