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保育士1年目のやりがいと戸惑いー卒業生インタビューより(国際コミュニケーション学科 首藤貴子)

研究室からこんにちは(短期大学)
●公立保育所ではたらく沙織さん
 愛知産業大学短期大学子どもコース在籍中に保育士試験に合格し、卒業と同時に働きはじめた沙織さん(仮名、30代女性)。勤務先は、公立保育園の3歳児クラス。現在は担任補助として、子どもたちと毎日6時間近く一緒に過ごしています。
 歯科助手として働いていた沙織さんでしたが、出産後は子育て中心の生活でした。その中で「(わが子が)本当にかわいいと思えた」と語ります。「特別、子ども好きというわけではなかった」という沙織さんでしたが、子育てを通して“想定外の自分”に出会ったようです。

●保育士という職業に興味
 「(子育て中心の)生活に不満はないけれど、この先もずっとこの生活でいいのかな」。そう考えたとき、「学びたい」という気持ちが湧いてきたといいます。そして、保育士になることを目標に本学に入学。短大時代には、「勉強が楽しいと思えた」と振り返ります。
 沙織さんが保育士という職業について興味を抱いたのは、わが子の通う園の先生の姿がきっかけでした。登園するとき担任の先生の顔が見えると、わが子は心からうれしそうな表情をする。その表情を見て、わが子は担任の先生のことが大好きなんだと実感したといいます。
 沙織さんによれば、その先生は「とにかく雰囲気が素敵」とのこと。笑顔であたたかく子どもたちを迎え、子どもからの働きかけにていねいに応答している先生の姿が目に浮かびました。

●仲直りに「ゴメンナサイ」は必要?
 保育士として働く今、園の子どもたちは「想像していた以上にかわいい」とのこと。毎日一緒に過ごすからこそ見えてくる一人ひとりのリアルな姿が微笑ましく、そして、この子たちの成長を日々感じられる。そんな保育士としてのやりがいが語られました。
 一方で、今困っていることの一つは、子ども同士のケンカだといいます。ケンカをした子どもたちにどのように声をかけたらよいのか、「ゴメンナサイ」を言わせるのか等々、戸惑ってしまうとのこと。
 一口にケンカと言っても、ケンカが起こる環境やケンカする子どもは日々異なります。同じ子ども同士のケンカでも、その子たちは日々発達しますから、昨日のボク/ワタシと今日のボク/ワタシは異なります。一つとして同じケンカはないので、決まった「ケンカの対応のしかた」があるわけではない。沙織さんは、このような保育実践における個別性・一回性に向き合っています。だからこそ戸惑いを感じているのでしょう。

●保育士に求められる実践力
 子どもは自ら外の世界に働きかけることによって発達していきます。そこに必要なのは、その働きかけに応答し意味を与えてくれる(“解釈”してくれる)大人の存在です。ケンカをしている子どもたちは、そこに立ち会う保育士の“解釈”を頼りにしながら、自分の行動の意味や相手の思いに気づいていくのです。保育士には、その時その場の状況・文脈の中で、その子のLIFE(生活や成育歴、一生涯、生命力といったその子の生きる世界)の理解にもとづいた“解釈”をするという、高度な実践力が求められます。
 沙織さんは、子どもたちが昼寝をしている間、先輩保育士をつかまえて自らの保育実践について相談しています。個別性・一回性という保育実践の難しさに直面しつつも、専門職である保育士として力量向上をめざす沙織さんです。