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<イベント紹介>図書館主催読書推奨企画講演会(建築学科 山口雅英)

研究室からこんにちは(建築学科)
 本学図書館が主催する「読書推奨企画」というレクチャーの講師を担当することになりました。このレクチャーは大学図書館が主催するもので、学生に読書の大切さ面白さを啓蒙しようというものです。私が推奨図書として選んだのは「生命のからくり(中屋敷均著 講談社現代新書)」。この本を使って「『生命のからくり』から探るアートの正体」というテーマでお話しさせていただき。
「アートって何だろう」
 自身が作家として表現活動を行う者として、また大学の教員として学生に指導する立場として自分の活動や思索の拠り所とし、この問題については自分なりにでも答えを持ちたいと若い頃から美術に関するいろいろな本を読んだり、話を聞いてきました。しかし私が求めるような、例えば古代の洞窟壁画からレオナルド・ダ・ヴィンチ、ピカソ、難解な現代美術そして子どもの落書きまであらゆる表現活動を網羅するような根源的な考え方に出会うことはできませんでした。
 ところがある時ふと、自分の作品のタイトルにそのヒントがあることに気づいたのです。そのタイトルは「誰カガボクヲ創ッタヨウニボクモ何カヲ創ロウト想ッタ」。私の体を型紙にして作った人形を使ったインスタレーションで、その人形が、自分はどうやって創り出されたのかということに想いを馳せながらいろんなモノを作っているという内容の作品なのですが、その作品を作ることもまた作者である私自身が」自分」を創り出したさたことの不思議さへ想いを馳せるという二重構造というか入れ小細工のようになったものでした。私のこの作品に限らず、人間にとって作品を作るということは意識する、しないにかかわらず生命あり方をなぞる営みなのではないか。ならば生命が生まれ生きる、その原理に芸術を考えるヒントが隠されているのではないかと考えたのです。そして出会ったのが「進化論」、チャールズ・ダーウィンが1859年に発表した「種の起源」という著書で提唱した理論です。
「進化論」という言葉自体は昔から知っていましたが大雑把な知識しか持っていませんでした。生物は絶え間なく変異している。ある者は新しい環境に適応し繁栄する、ある者はその変異が環境に適応できず滅んでいく。進化論で提唱されたこうした生命のセオリーは、人間の文化のセオリーとして読み換えることができるのではないか、だとしたらそのセオリーはアートにも当てはまるはず、そのような手応えを得ることができたのです。
 来るべき未知の様々な環境に適応していくために、生物は多様に変異することで対応していきます。生物にとって多様性が重要な理由、これを人間の精神活動に当てはめてみたとき、そこに人間の精神活動はたまた社会的活動におけるアートの重要性が見えてきたのです。レクチャーではこのことについて詳しく紹介していく予定です。
現代では遺伝子の研究が進み、ダーウィンの時代では解明することができなかった生物進化のメカニズムを遺伝子レベルで研究することができるようになりました。「生命のからくり」ではそのことが詳細に記述されています。有性生殖、両親それぞれの持つ形質を組み合わせることで起こる変異の他にDNAの転写において一定の割合で起こる転写ミスも生物の変異にとって大切な要因だそうです。またこうした変異は偶発的に、ランダムに、無目的に起こることによりあらゆる方向に様々な変異が起こりやすい、つまり多様性が生じやすくなっているのだそうです。もしひとつの方向を志向し変異の多様性が減ずると、その目論見が外れた場合、全滅の恐れがあるのですが、生命にはそれを防ぐカラクリがあるのです。多様性を生みだすからくり、これは会社や国家にとっても必要なことです。アートはそのからくりの重要な役割を担っていると言えるのではないでしょうか。ならば生物が多様性を生み出すそのからくりのなかにアートのからくりを知るヒントがあるはず。レクチャーではそんなお話しをさせていただきたいと思います。
 みなさんのお越しを心よりお待ちしております。

■テーマ 「『生命のからくり』から探るアートの正体」
■開催日 2019年11月21日(木) 13:00-13:30
■会 場 愛知産業大学2号館2階 図書館
■講 師 愛知産業大学通信教育部 建築学科 准教授 山口雅英