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効果的な配色 -面積の効果-(建築学科 山口雅英)

研究室からこんにちは(建築学科)
 造形の表現力は、どんな要素をどのように構成するかということで方向性が決まってきます。
構成では、位置、大きさ、他の要素との距離関係などいろいろなことを考えますが、ここでは配色における大きさ、面積についての基礎的なひとつの考え方を紹介します。
 配色とは「色」という役者を使って物語を演出することと言ってよいでしょう。どんな物語を表しているのかをはっきりさせるためには色それぞれの役割を明快にしていく必要があります。この時、ポイントとなるのがそれぞれの面積です。
 1番大きな面積を占める色を「ドミナントカラー」と言います。ドミナント(dominant)とは「支配的な」という意味です。画面の大部分を支配している色ということを表します。ドミナントカラーは作品の印象に大きく関わってきます。しかし、ドミナントカラーだけで印象を演出するのは十分ではありません。人間は物事を必ず対比の中で判断します。ドミナントカラーがどんな色と組み合わさるかによってその印象は異なってきます。想像してみてください。例えばドミナントカラーが「赤」だとして、黒と組み合わせる、ピンクと組み合わせる、緑と組み合わせる、オレンジと組み合わせる、ブラウンと組み合わせる…まったく画面の印象は違うものとなります。
ドミナントカラーと組み合わせて作品の印象を方向づける役割を果たすのが「アソートカラー」です。アソート(assort)とは「組み合わせる」という意味ですが、ここではドミナントカラーに「付け合わせる色」と考えると良いでしょう。画面の中ではドミナントカラーの次に大きな面積を与えます。
 ドミナントカラーとアソートカラーで概ね配色の印象は決まってきますが、もうひとつ色を付け加えるとさらに効果的です。人間はどこかに中心やクライマックスを求めたがるものです。何かワンポイント、強調されたものを加えるとこうした人間の欲求を満足させることができます。その役割を果たす色が「アクセントカラー」です、アクセント(accent)は馴染み深い言葉だと思います。「強調する」という意味です。ドミナントカラーとアソートカラーで構成された舞台に、アクセントカラーという主役が登場する、そのようなイメージで、周囲と比べてより際立つ色を配置するのです。大きな面積にすると作品の印象が変わってしまうため、小さな面積で配置するのがポイントです。
 ドミナント、アソート、アクセントの比率は70:25;5程度を目安とするのが基本だと言われていますがケースバイケースです。面積そのものに配色の表現力に大きく関わる。その事例を動画で紹介します。全く同じ3色を使ってもその役割(面積)を変えるだけで全くことなった印象の配色になるのです。
 さて、ここまで配色の話をしてきましたが、このドミナント、アソート、アクセントの考え方は配色以外にもいろいろな表現に応用することができます。例えば形の構成において直線と曲線とギザギザのバランスをこれに当てはめて考えてみる、建築、インテリアなどで使用する素材(コンクリート、木、金属、ガラス、布など)の比率を検討してみるなど。ドミナント、アソート、アクセントの考え方は配色や造形よりもさらに深い部分で、人間の感じ方、考え方、判断の仕方に結びついたものなので他にも音楽、料理などにも応用することができます。
 そのような視点でいろいろな表現や行動、活動を観察してみるのも面白いと思います。いろいろな発見、気づきがあるのではないでしょうか。

「造形tips /配色における面積比」
https://youtu.be/TUNY7Gr_75Q