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おかざき世界子ども美術博物館 親子ワークショップ「紙版画に挑戦!」建築学科 山口雅英)

研究室からこんにちは(建築学科)
 現在、おかざき世界子ども美術博物館で開催されている「シャガール展-夢みる版画たち」のスピンオフ企画として10月23日(土)に行われた親子ワークショップ「紙版画に挑戦!」の講師を担当しましたので報告します。
 この企画にふさわしいワークショップにするためにいくつかの工夫をしました。またこの講座のために新しく版画の技法を考案しましたので紹介します。
まず工夫した点。シャガール展に関連づけたワークショップ、私は副題として「はんがでつくろう わたしの、ぼくのシャガール」という副題をつけました。参加した子どもたちには何もないところから考えさせるのではなく、私が用意した紙片を組み合わせて絵柄を作るようにしました。実はこの紙辺は私がシャガールの描く人物や動物から抽出した、いかにもシャガールっぽい形のもの。こどもたちの中にあるシャガール的な感性を刺激しようと考えました。何もない自由な状態よりもこうしたものからスタートするほうが、あたかも積み木遊びをするように子どもたちの発想は広がっていきます。また各作業台にはシャガールの絵を用意し、模様などはそこから探すようすすめました。自分の作品に使う素材を探すという意識で作品を見ると、ただ漫然と見ているよりも多くの気づきや発見が得られるものです。ものづくりと鑑賞をミックスした活動になることを意図しました。
 次はこのワークショップのために考案した新しい技法について解説します。添付の画像は私が説明に使った作例。左が版、右がそれを刷ったものです。画用紙を切り抜いて作ったパーツを組み合わせ図柄を構成、線はボールペンで凹ませます。これを180番のサンドペーパー (茶色部分)の上に木工用ボンドではります。この上にメラミンスポンジでインキをつけていきます。ローラーと違い複数の色をランダムに置くことができます。スポンジのテクスチャーによるツブツブで複数の色が重なるのはこの技法ならではの風合いです。
 さてサンドペーパーを台紙にする理由、これが今回の技法の肝。左の版、図柄のまわりがインキで汚れているのがわかると思います。しかし、右の作品では図柄の周囲はほとんど汚れていません。サンドペーパー についたインキの汚れは作品用紙にほとんどつかないことを発見したのです。かすかに蝶の鱗粉みたいに着くのはむしろ味わいと言えます。さて台紙に貼るともうひとつよいことがあります。インキをつけるとき片方の手で版を抑えていないといけませんが、ご覧のように紙やすりの台紙にはインキがついていないところがあります。そこを抑えれば手をほとんど汚さずに作業ができます。事前に知り合いの小学校の先生何人かにこのやり方を紹介したら大絶賛をいただきました。当日も教育関係者2名の参観希望がありました。
当日は保護者を含めると36人もの参加がありました。素材や図柄を選ぶだけでよく、作り方も簡単なのでこどもだけでなくおそらく付き添いだけのつもりで来たであろう保護者のみなさんも夢中になって制作していました。