「密」とは(国際コミュニケーション学科 横瀬浩司)
研究室からこんにちは(短期大学)
「3つの密を避けましょう!」
3つの「密」とは、換気の悪い密閉空間・多数が集まる密集場所・間近で会話や発声をする密接場面をいう。令和2年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大期に集団感染防止のため総理大臣官邸・厚生労働省が掲げた標語である。
刑事事件において、「密」が問題となった判例がある。
旧鳥獣保護法(「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(大正7年法律第32号)を全面改廃する形で、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成14年法律第88号)が、平成14年7月12日に公布された。)16条は、「日出前若ハ日没後、市街其ノ他人家稠密ノ場所若ハ衆人群集ノ場所ニ於テ又ハ銃丸ノ達スヘキ虞アル人畜、建物、汽車、電車若ハ艦船ニ向テ銃猟ヲ為スコトヲ得ス」と規定して、その違反に対しては、同法21条1項において、「1年以下ノ懲役又ハ50万円以下ノ罰金ニ処ス」と規定していた。
旧鳥獣保護法16条にいう「人家稠密(じんかしゅうみつ)ノ場所」の「稠密」とは、一般的・辞書的な字義は、「多く集まってこみ合っていること」を意味するとされている。では、どの程度人家が集まっていれば、「人家稠密ノ場所」といえるかが問題となる。
最高裁平成12年2月24日第二小法廷決定(平成9年(あ)第1299号、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律違反被告事件)(刑集54巻2号106頁、判例時報1706号175頁、判例タイムズ1027号105頁)は、主要道から農家に通じる私道上で、駐車中の自動車内から、道路脇の田んぼに降りていたキジを狙って散弾銃を発射した、という行為が、上述の旧鳥獣保護法16条が禁止する「人家稠密ノ場所」における銃猟に該当するかが争点となった。
被告人は、平成6年11月16日午後2時25分頃、富山県富山市新保460番地H方先の主要道から農家に通じる道路(私道)において、同所に駐車した普通自動車内から道路脇の田んぼに降りていた鳥獣(キジ)を捕獲するため、所携の散弾銃を発射した。そして、同所為が、旧鳥獣保護法16条が禁止する「人家稠密ノ場所」における狩猟に該当するとして起訴された事案である。被告人が散弾銃を発射した場所は、富山市の中心部から数キロメートル南方に位置した、人家と田畑が混在する地域内にあり、半径200メートル以内には、全方位に公道が存在し、かつ人家が約10軒あった。
最高裁平成12年2月24日第二小法廷決定は、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条が『市街其ノ他人家稠密ノ場所』等における銃猟を禁止しているのは、このような場所において銃器を使用して狩猟をすることが他人の生命、身体等に危険を及ぼすおそれがあるので、これを防止することなどを目的とするものである。従って、同条にいう『人家稠密ノ場所』に該当するか否かは、右のような同条の趣旨に照らして判断すべきところ、原判決の認定及び記録によると、被告人が狩猟のため散弾銃を発射した場所は人家と田畑が混在する地域内にあり、発射地点の周囲半径約200メートル以内に人家が約10軒あるなどの状況が認められるのであるから、右場所が『人家稠密ノ場所』に当たるとした原判断は相当である。」とした。
目的論的解釈論からの事例判断の判例である。本決定が人家の存在する範囲として散弾銃発射場所の周囲半径約200メートルを問題にしたのは、本件で使用された散弾銃の射程距離が約250メートルであったこととの関係で、公共に対する抽象的危険の存在を示すためであったという指摘がある。
3つの「密」とは、換気の悪い密閉空間・多数が集まる密集場所・間近で会話や発声をする密接場面をいう。令和2年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大期に集団感染防止のため総理大臣官邸・厚生労働省が掲げた標語である。
刑事事件において、「密」が問題となった判例がある。
旧鳥獣保護法(「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(大正7年法律第32号)を全面改廃する形で、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成14年法律第88号)が、平成14年7月12日に公布された。)16条は、「日出前若ハ日没後、市街其ノ他人家稠密ノ場所若ハ衆人群集ノ場所ニ於テ又ハ銃丸ノ達スヘキ虞アル人畜、建物、汽車、電車若ハ艦船ニ向テ銃猟ヲ為スコトヲ得ス」と規定して、その違反に対しては、同法21条1項において、「1年以下ノ懲役又ハ50万円以下ノ罰金ニ処ス」と規定していた。
旧鳥獣保護法16条にいう「人家稠密(じんかしゅうみつ)ノ場所」の「稠密」とは、一般的・辞書的な字義は、「多く集まってこみ合っていること」を意味するとされている。では、どの程度人家が集まっていれば、「人家稠密ノ場所」といえるかが問題となる。
最高裁平成12年2月24日第二小法廷決定(平成9年(あ)第1299号、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律違反被告事件)(刑集54巻2号106頁、判例時報1706号175頁、判例タイムズ1027号105頁)は、主要道から農家に通じる私道上で、駐車中の自動車内から、道路脇の田んぼに降りていたキジを狙って散弾銃を発射した、という行為が、上述の旧鳥獣保護法16条が禁止する「人家稠密ノ場所」における銃猟に該当するかが争点となった。
被告人は、平成6年11月16日午後2時25分頃、富山県富山市新保460番地H方先の主要道から農家に通じる道路(私道)において、同所に駐車した普通自動車内から道路脇の田んぼに降りていた鳥獣(キジ)を捕獲するため、所携の散弾銃を発射した。そして、同所為が、旧鳥獣保護法16条が禁止する「人家稠密ノ場所」における狩猟に該当するとして起訴された事案である。被告人が散弾銃を発射した場所は、富山市の中心部から数キロメートル南方に位置した、人家と田畑が混在する地域内にあり、半径200メートル以内には、全方位に公道が存在し、かつ人家が約10軒あった。
最高裁平成12年2月24日第二小法廷決定は、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条が『市街其ノ他人家稠密ノ場所』等における銃猟を禁止しているのは、このような場所において銃器を使用して狩猟をすることが他人の生命、身体等に危険を及ぼすおそれがあるので、これを防止することなどを目的とするものである。従って、同条にいう『人家稠密ノ場所』に該当するか否かは、右のような同条の趣旨に照らして判断すべきところ、原判決の認定及び記録によると、被告人が狩猟のため散弾銃を発射した場所は人家と田畑が混在する地域内にあり、発射地点の周囲半径約200メートル以内に人家が約10軒あるなどの状況が認められるのであるから、右場所が『人家稠密ノ場所』に当たるとした原判断は相当である。」とした。
目的論的解釈論からの事例判断の判例である。本決定が人家の存在する範囲として散弾銃発射場所の周囲半径約200メートルを問題にしたのは、本件で使用された散弾銃の射程距離が約250メートルであったこととの関係で、公共に対する抽象的危険の存在を示すためであったという指摘がある。