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研究室からこんにちは(国際コミュニケーション学科 川崎直子)

研究室からこんにちは(短期大学)
 6月中旬、北海道旭川空港から約100km、車で2時間ほどの森林に囲まれた「下川町」を訪れました。
下川町は東京23区とほぼ同じ広さで、町の90%が森で占められています。これほど広大な町の人口は2,879人(2024年6月現在)で、町の基幹産業は林業、農業と酪農です。
 この時期本州は梅雨ですが、北海道ではフランスギクやルピナスなどの可憐な草花が道端で美しく咲き、爽やかな風が吹いていました。また、空港からの道すがら、エゾリス、キタキツネ、エゾシカ、エゾタヌキの姿を見かけました。これほど自然豊かな町が存在することが奇跡のようです。
    


 下川町はスキージャンプ競技の伊藤有希選手や葛西紀明選手の出身地で、多くの選手を輩出したことでも有名です。町内には無料のスキー場やジャンプ台があり、町外から「スキージャンプ留学」に来る子どもたちもいるそうです。

  


 今回、北海道を訪れた理由は、下川町教育委員会に勤務されている本学日本語教育コースを2024年3月に修了された松本竜義さんからのご依頼で、「やさしい日本語」についてお話しする機会をいただいたからです。平日の午後7時開始というのにたくさんの方が集まってくださり、行政の方もまじえてグループワークも楽しく行いました(当日名寄新聞社の方が取材に来られました)。
 また下川町と同じ上川地方に住んでいらっしゃる2023年3月に同じく日本語教育コースを修了された塚田初美さんも、山道を3時間運転して参加してくださいました。北海道のこの地域で修了生のお二人にお会いできて、とても幸せでした。

   

 翌日は、塚田さんが非常勤講師として勤務されている日本で唯一の公立の日本語学校「東川日本語学校」を小山正道校長先生のご好意で訪問させていただきました。公立日本語学校の存在は全国的に注目されていて、日本語教師だったら一度は見学したいと思う日本語教育機関です。

 2009年から行われてきた町の短期日本語・日本文化研修事業が実を結び、2015年10月に東川日本語学校が開校されたとお聞きしました。開校に至るまでに、松岡市郎前東川町長は、総務省に何度も足を運ばれたそうです。当初東川町やその周辺地域には日本語教育の専門家が少なく、小中学校と高等学校の校長先生や東川町の元教育長などが中心となって学校運営を始められたとのことで、ゼロから体制を整えていく過程には大変なご苦労があったことと思います。

 東川日本語学校は、1961年に建設された東川小学校を改修した「せんとぴゅあ」という町の公共施設の中にあります。細長く続く廊下に教室が並んでいる光景は、ここが元小学校だったことを彷彿とさせます。また、イスラム教徒の留学生にも配慮して祈祷室が設けられていました。
多くの留学生が、公立だから安心なので東川に留学することを決めたとのことです。どの教室でも見られた留学生たちの落ち着いた佇まいと笑顔から、東川日本語学校が町民の方に温かく見守られていることがよく伝わってきました。

 2024年4月を境に、日本語教育は大きな転換期を迎えました。今後は、こうした公立の日本語学校が増えていくのではないでしょうか。

    

〈参考資料〉
「北海道で暮らそう」https://www.kuraso-hokkaido.com/town/info/shimokawa
「下川町ホームページ」https://www.town.shimokawa.hokkaido.jp/shoukai/2024/06/post-8.html
「東川日本語学校ホームページ」https://higashikawa-jls.com/about/
2024年6月22日 名寄新聞社より記事掲載の許可取得