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2023年12月号「研究室からこんにちは」(横瀬浩司)

研究室からこんにちは(短期大学)
模擬裁判

 過日、部屋を整理していたら、引っ越し用の段ボール箱の底から「昭和59年度模擬裁判資料」と油性ペンで書かれた、鶯色の学校名の印刷されたA4判の封筒が出てきた。中には、「模擬裁判―閻魔の鏡―」という題名の「あらすじ」や元裁判所書記官のO先生が作成した手書きの台本のコピーなどが入っていた。
 この昭和59年度は、私が本学園にお世話になった年で、名古屋の裁判所や三好の刑務所の見学に学生を連れて行ったりした。これは、私が大学の学部生の時、F先生の引率により中野の刑務所の見学に行った経験に基づく法教育の必要性からである。裁判所見学の帰路、学生から「文化祭に模擬裁判をやってみたい」という発案があり、学生たちが演じる上記の「模擬裁判―閻魔の鏡―」が実現した。
 昨今、法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/content/001348037.pdf)に「法教育授業・補助教材 『模擬裁判をやってみよう』(中学校社会科公民的分野)(1時間で行う場合・短縮版)」という台本などがそろった教材がある。
 本教材の目的として、以下のようにある。

 本教材は、平成28年4月から中学3年生が用いる社会科公民的分野の教科書(東京書籍から刊行されているもの)において、「模擬裁判をやってみよう」との内容が提示されていることを受け、同内容についての深い理解を目的として作成されたものであり、同内容に沿った模擬裁判の台本、ワークシート、補助資料等から構成されている。
 本教材の具体的な目的は、以下のとおりである。
 (1) 模擬裁判という擬似体験を通じて、刑事裁判に関わる裁判官、検察官、弁護人の役割を理解する。なお、後記2のとおり、本教材の内容、性質に鑑み、検察官役が有罪を獲得することが目的ではないことに留意する。
 (2) 裁判官、検察官、弁護人によって証拠の評価が異なりうることを理解する。
 (3) 評議を通じて、自分の意見を言い、自分とは異なる意見を聞き、自分なりの最終結論を出す力を養う。

 また、令和5年には、日本弁護士連合会が主催する「第16回高校生模擬裁判選手権」が開催されている。この大会の狙いとして、以下のようにある。

 この大会は、1つの刑事事件を題材にして、高校生自身が「検察官」「弁護人」になって、争点を見つけ出して主張と証拠を整理し、証人尋問・被告人質問・論告弁論を準備した上で、本番では実際の訴訟活動を行うという「実演型模擬裁判」の選手権です(本番では、弁護士が裁判長役・被告人役・証人役を務めます。現役の裁判官・検察官・弁護士・学識経験者・マスコミ関係者などが審査員を務めます。)。
 実際の法廷で(または《オンライン上の「法廷」》で)、午前と午後で「検察側」「弁護側」を入れ替わりながら、他校と「対戦」します。使用教材は、主催者が作成し、下記の日程の参加校説明会で配布する予定です。なお、本番の準備に当たっては、参加校ごとに「支援弁護士」「支援検事」の助言等を受ける機会が与えられます。
 本物さながらの訴訟活動を準備し、これを実際に行う経験を通じ、事実を的確に把握し多角的な視点で考える力、事実に基づいて論理的に意見を構成する力、意見を分かりやすく他者に伝える力を育成することや、問題や課題を法に基づいて主体的に解決することに関心を持ち、積極的にその過程に参加する態度を涵養することなどを狙いとしています。

 民法が改正され、令和4年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わった。18歳になると法律上一人前として扱われることになる。今後、法教育の重要性が増してくる。