400万人を超えた「隣人」たち:日本語教育の視点から(国際コミュニケーション学科川崎 直子)
お知らせ
1. 「外国人住民」はもう特別な存在ではありません
皆さんの周りを見渡してみてください。最近では、コンビニや飲食店、地域の公園、駅で、外国にルーツを持つ人たちの姿を見かけることが当たり前になっていませんか?
今、日本に住む外国人の数は、私たちの想像を超えるスピードで増えています。出入国在留管理庁の発表によると、2025年末時点での在留外国人数は412万5,395人で、ついに400万人の大台を突破し、過去最高を更新しました。前年と比べても約35万人(9.5%)も増えており、その勢いは増すばかりです。
ここで注目したいのは、この数字にはいわゆるインバウンドと言われる「観光客」は含まれていないという点です。3か月を超えて日本に滞在し、私たちと同じようにこの国に生活の基盤を置く「住民」としての数字なのです。日本語教育の世界では、彼らを「生活者としての外国人」と呼んでいます。
特に都市部での増加は顕著です。東京都(約80万人)を筆頭に、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県といった地域では、以前の調査を上回るペースで増え続けています。出身国・地域も多彩です。中国(約93万人)に続き、ベトナム、韓国、フィリピン、そして近年急増しているネパール(約30万人)など、アジア諸国を中心に196の国と地域から人々が集まっています。
現在、日本の全人口に占める外国人の割合は約3.2%に達しました。専門家の予測では、2070年にはこの比率が10%に達すると言われています。「たまに見かける外国人」から、当たり前に隣に住む「隣人」へと、社会の構造が根底から変わろうとしているのです。
2.増え続ける「日本で暮らす外国人」
では、なぜこれほど急激に増えているのでしょうか。その背景には、日本が直面している深刻な「人手不足」という切実な事情があります。
2019年、政府は外国人の受け入れを拡大する政策転換を行いました。特に地方の産業を支えるため、多くの外国人の方々を「働き手」として迎え入れる仕組みを整えたのです。厚生労働省のデータによれば、日本で働く外国人は2024年10月末時点で230万人に達し、わずか10年前の約3倍にまで増えました。

彼らがどこで働いているのか、具体的な業種を見てみると、私たちの生活がいかに彼らに支えられているかがよくわかります。特に注目すべきは、彼らを採用している事業所の約62%が、従業員30人未満の中小企業だということです。大企業だけでなく、地域に根ざした小さなお店や工場こそが、外国人の力なしでは立ち行かなくなっているのが現状です。また、製造業や建設業では「技能実習(あるいは育成就労)」の枠組みの人々が、飲食店では「留学生」が大きな役割を担っています。
3.「治安が悪くなる」という不安をどう考えるのか
外国人の増加と聞くと、中には「治安が悪化するのではないか」と漠然とした不安を抱く方がいるかもしれません。インターネット上でもそうした声が聞かれることがありますが、公的な統計データはその懸念が必ずしも実態と一致していないことを示しています。
法務省の『犯罪白書』によれば、外国人の刑法犯検挙者数は、ピーク時の2005年(1万4,786人)と比較して、2023年は1万31人と、依然として当時の約3分の2の水準にとどまっています。この20年足らずで在留外国人数は約1.7倍に急増した一方で、犯罪者数は大幅に減少しているのです。
このように、外国人の数が増える一方で犯罪件数が抑制されているという事実は、私たちが抱きがちな不安が、必ずしも実態を反映したものではないことを教えてくれます。特定の情報から生じるイメージにとらわれるのではなく、こうした客観的な事実に目を向けることが、根拠のない不安を解消する第一歩となります。
お互いを正しく理解し、尊重し合える基盤を整えること。それこそが、日本が目指すべき「多文化共生社会」を実現し、結果としてすべての人にとって安全で豊かな地域を創り出すための鍵となるはずです。
4.これからの「多文化共生」と日本語教育の役割
日本語教育や日本語支援に興味を持つ皆さんにとって、これからの日本では取り組むべきテーマが多様化し、その重要性が一段と高まっています。これまで「日本語教育」といえば、留学生やビジネスマンが通う専門的な教育機関をイメージしがちでした。しかし、これからは違います。地域のボランティア教室、日々の業務が行われる企業の中、そして学校や幼稚園で外国にルーツを持つ子どもたちの学びを支える場、外国出身の保護者の支援 ― これらすべてが、これからの日本語教育の大切なフィールドです。
単に「言葉のルール」を教えるだけではありません。異なる文化や背景を持つ人同士が、どうすればお互いの個性を尊重し合って暮らしていけるのか。その橋渡しをすることこそが、多文化共生の核心となるでしょう。
日本は今、歴史的な転換点にいます。言葉や文化の壁を乗り越えて、新しい「隣人」たちと手を取り合う社会をどう作っていくか。他者を理解しようとする姿勢が、これからの日本を創る大きな力になるはずです。そして、誰もが「この街で暮らしてよかった」と思える未来を、一緒に考えてみませんか。
〈参考資料:2026年4月13日閲覧〉
朝日新聞デジタル 2025年10月30日版
https://www.asahi.com/articles/ASTBG2T6ZTBGPTIL00RM.html?msockid=2dfeeaa4c91b61d616c1f91ec8a16001
朝日新聞デジタル 2026年1月16日
https://digital.asahi.com/articles/ASTDS21DVTDSUHBI029M.html?iref=pc_leadlink
出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
皆さんの周りを見渡してみてください。最近では、コンビニや飲食店、地域の公園、駅で、外国にルーツを持つ人たちの姿を見かけることが当たり前になっていませんか?
今、日本に住む外国人の数は、私たちの想像を超えるスピードで増えています。出入国在留管理庁の発表によると、2025年末時点での在留外国人数は412万5,395人で、ついに400万人の大台を突破し、過去最高を更新しました。前年と比べても約35万人(9.5%)も増えており、その勢いは増すばかりです。
ここで注目したいのは、この数字にはいわゆるインバウンドと言われる「観光客」は含まれていないという点です。3か月を超えて日本に滞在し、私たちと同じようにこの国に生活の基盤を置く「住民」としての数字なのです。日本語教育の世界では、彼らを「生活者としての外国人」と呼んでいます。
特に都市部での増加は顕著です。東京都(約80万人)を筆頭に、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県といった地域では、以前の調査を上回るペースで増え続けています。出身国・地域も多彩です。中国(約93万人)に続き、ベトナム、韓国、フィリピン、そして近年急増しているネパール(約30万人)など、アジア諸国を中心に196の国と地域から人々が集まっています。
現在、日本の全人口に占める外国人の割合は約3.2%に達しました。専門家の予測では、2070年にはこの比率が10%に達すると言われています。「たまに見かける外国人」から、当たり前に隣に住む「隣人」へと、社会の構造が根底から変わろうとしているのです。
2.増え続ける「日本で暮らす外国人」
では、なぜこれほど急激に増えているのでしょうか。その背景には、日本が直面している深刻な「人手不足」という切実な事情があります。
2019年、政府は外国人の受け入れを拡大する政策転換を行いました。特に地方の産業を支えるため、多くの外国人の方々を「働き手」として迎え入れる仕組みを整えたのです。厚生労働省のデータによれば、日本で働く外国人は2024年10月末時点で230万人に達し、わずか10年前の約3倍にまで増えました。

彼らがどこで働いているのか、具体的な業種を見てみると、私たちの生活がいかに彼らに支えられているかがよくわかります。特に注目すべきは、彼らを採用している事業所の約62%が、従業員30人未満の中小企業だということです。大企業だけでなく、地域に根ざした小さなお店や工場こそが、外国人の力なしでは立ち行かなくなっているのが現状です。また、製造業や建設業では「技能実習(あるいは育成就労)」の枠組みの人々が、飲食店では「留学生」が大きな役割を担っています。
3.「治安が悪くなる」という不安をどう考えるのか
外国人の増加と聞くと、中には「治安が悪化するのではないか」と漠然とした不安を抱く方がいるかもしれません。インターネット上でもそうした声が聞かれることがありますが、公的な統計データはその懸念が必ずしも実態と一致していないことを示しています。
法務省の『犯罪白書』によれば、外国人の刑法犯検挙者数は、ピーク時の2005年(1万4,786人)と比較して、2023年は1万31人と、依然として当時の約3分の2の水準にとどまっています。この20年足らずで在留外国人数は約1.7倍に急増した一方で、犯罪者数は大幅に減少しているのです。
このように、外国人の数が増える一方で犯罪件数が抑制されているという事実は、私たちが抱きがちな不安が、必ずしも実態を反映したものではないことを教えてくれます。特定の情報から生じるイメージにとらわれるのではなく、こうした客観的な事実に目を向けることが、根拠のない不安を解消する第一歩となります。
お互いを正しく理解し、尊重し合える基盤を整えること。それこそが、日本が目指すべき「多文化共生社会」を実現し、結果としてすべての人にとって安全で豊かな地域を創り出すための鍵となるはずです。
4.これからの「多文化共生」と日本語教育の役割
日本語教育や日本語支援に興味を持つ皆さんにとって、これからの日本では取り組むべきテーマが多様化し、その重要性が一段と高まっています。これまで「日本語教育」といえば、留学生やビジネスマンが通う専門的な教育機関をイメージしがちでした。しかし、これからは違います。地域のボランティア教室、日々の業務が行われる企業の中、そして学校や幼稚園で外国にルーツを持つ子どもたちの学びを支える場、外国出身の保護者の支援 ― これらすべてが、これからの日本語教育の大切なフィールドです。
単に「言葉のルール」を教えるだけではありません。異なる文化や背景を持つ人同士が、どうすればお互いの個性を尊重し合って暮らしていけるのか。その橋渡しをすることこそが、多文化共生の核心となるでしょう。
日本は今、歴史的な転換点にいます。言葉や文化の壁を乗り越えて、新しい「隣人」たちと手を取り合う社会をどう作っていくか。他者を理解しようとする姿勢が、これからの日本を創る大きな力になるはずです。そして、誰もが「この街で暮らしてよかった」と思える未来を、一緒に考えてみませんか。
〈参考資料:2026年4月13日閲覧〉
朝日新聞デジタル 2025年10月30日版
https://www.asahi.com/articles/ASTBG2T6ZTBGPTIL00RM.html?msockid=2dfeeaa4c91b61d616c1f91ec8a16001
朝日新聞デジタル 2026年1月16日
https://digital.asahi.com/articles/ASTDS21DVTDSUHBI029M.html?iref=pc_leadlink
出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html




