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2017年度 デザイン学科卒業制作 (デザイン学科山口雅英)

研究室からこんにちは(デザイン学科)
デザイン学科准教授の山口です。
さる1月20日(土)、2017年度、卒業研究最終審査を行い、3名の学生が合格しました。人数は少ないものの、本学での学習の集大成と呼ぶにふさわしい、完成度の高い見ごたえのある作品ばかりでした。
では作品と作者のコメントをご覧ください。

画像上:小沢 一(絵画)
左から「幻像1」1620×1200mm、「六本木Tokyo」1303×1620mm、「澳門残像」1120×1455mm、「幻像 2」1455×1120mm

「幻像1」
大名古屋ビルヂングも戦艦大和も、恰好の良い造形をしていて興味深い。
初めて完成した大名古屋ビルヂングを見た時、圧倒的な高層ビルであるにも拘わらず、下方部分が巨大な船であるように思えた。ビルのなかに居る人々を乗せて、何処か遠くに旅立つようなイメージを連想させた。それはまるで、近い将来予想されている巨大津波から逃れる人々を乗せるノアの箱舟のようであった。
戦艦大和は、重い歴史を背負って海の底に沈んでいるが、戦争を知らない世代の私にとっては、戦艦大和がもつデザインへの理屈のない純粋な憧れの存在である。大名古屋ビルヂングという超高層ビルも、大和という巨大戦艦も、時代や目的は違えども、高い技術の結晶が生んだ素晴らしい建造物である。
この2つの優れた建造物を融合させた、心象作品を創造したいと考えた。

「六本木Tokyo」
六本木の路地を歩いていたところ、立方体が複雑に入り組んだような建物群に出会った。私はこの様なごつごつとした明確な造形が好みだ。背景には高層ビルがそびえている。この一つの高層ビルがあることで、入り組んだ建物群から感じられる窮屈さが緩和されているように思えた。それから、この風景の魅力は、浅葱色をしたガラスの建物にある。当初、このガラスの建物を目立たすつもりではなかったが、描き進めて行くうちに、山本学治=著「素材と造形の歴史」で学んだ「ガラスの技術と空間」が、頭に浮かんできた。(当初は、画面全面に雨を描写して建物群と背景の高層ビル、空間の3体に統一感を持たせて仕上げる予定でいた)。窓ガラスの発明は、中世の薄暗い人々の生活を、近代の暖かく明澄な生活へと一転させた。また、今道友信=著「美について」に記されているバベルの塔での建築の話では、古代の高層建築は、聖域である神の世界、超越世界に近づこうとする象徴であり、人間の強い自立的な意志の表れであった。
そのようなことを思い出しているうちに、一棟の高層ビルを背景にして、浅葱色のガラスの建物を主役にした建物群を描いてみようと構想が固まった。

「澳門残像」
数年前、澳門にあるモンテの砦を訪れた。ずっしりとした重量感と存在感のある造形、時間が作り出した壁の美しさに心を奪われた。
モンテの砦は澳門がポルトガルの統治下に置かれていた頃、イエズス会により、海からの侵略から街を守る防御施設として建造された。
現在の澳門は、東洋のラスベガスと言われカジノやホテルといった観光産業が盛んで華やかなイメージを持つが、かつては激しい戦火に見舞われた。澳門の街を歩いていると、庶民の生活域と新たな観光業域とに大きな温度差が感じられた。澳門は今でも人間の欲望に侵略されているのではないか。
モンテの砦の壁の迫りくる存在感は、この地に宿る歴史そのものであり、この地に住まう人々の生活も、この歴史の上に成り立っている。 歴史という時間が宿るモンテの砦の壁と、人間の欲望の象徴とも言える高層ビル群を融合させて、私が感受した澳門を描いてみたいと考えた。

「幻像 2」
モチーフは名古屋にある超高層ビルと戦艦の船橋、ビル群である。
これらのモチーフを組み合わせ、ビル群の中に独創的でな超高層ビルが立像する幻想的な風景を創造する。古代、高層建築は神の世界(宇宙)に近づこうとした人間の意志(夢)の象徴であり、現代の超高層ビルはそんな古代の思想を呼び起こしてくれる。
戦艦大和は重苦しい過去を背負いながらも、圧倒的なデザインとスケールによって、私たち現代人に夢や憧れを与えてくれる。
現代の超高層ビルを想うとき、この巨大な建物が私のなかで戦艦大和と同化し、人間の欲望、高い技術、過去や未来について考える。
戦艦大和はアニメ(空想の世界)で宇宙へと旅立ち、人間は今も古代と変わらず宇宙(神の世界)を目指している。
そんなことを考えながら、高層ビルと戦艦が融合した幻想世界を構想画として表現しようと試みた。


画像中:安藤貴子(絵画)
左から「雫」1000x1000mm、「雪の結晶」1000x1000mm、「光」1000x1000mm、「風」1000x1000mm
小さなチワワをいつもの散歩で感じた自然と共に存在感たっぷりに大きく描きました。いつもと違った角度から色々な表情を見てほしい。


画像下:大岩根麻衣(絵本)
タイトル:「僕が歩いたうしろには」見開き410×273mm / 10ページ
毎日、私の息子(3歳)はたくさん遊びます。歩き始めた頃は歩くのが楽しくて、抱っこもベビーカーも嫌がり、どこに行くのも歩きたがりました。
お砂場では、大きな山を作らされたり、バケツに水を入れて運んできての繰り返し。すべり台では、階段を上ってすべってを何十回も繰り返し。そんな息子も4月から幼稚園児です。息子とこうやって一緒に遊ぶことができるのは、
本当に限られた貴重な時間なのだなあと思うと、それが、とっても特別な世界に見えてきました。この気持ちをなんとか表現したくて、自分の好きな画家の作品を参考にしながら、10ページの絵本にまとめました。

【卒業制作展】
会期:平成30年2月27日(火)〜3月4日(日)9:30-19:00(最終日 -17:00)
会場:名古屋市民ギャラリー栄 8階9・10室